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【閲覧注意】本当にあった怖い話(タクシーの女)【中編】

2019年10月18日

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【閲覧注意】本当にあった怖い話(タクシーの女)【中編】

2019年10月18日

「結局あれはなんだったのか。」距離もあったし雨も降っていたし、たまたまお化けみたいに見えてしまったのか、それとも本当に危ない何かだったのか。確かめる術もなく、そのまま帰宅しました。来た道を歩いて。

当時、僕は父と母、そして5歳離れた妹とマンションに住んでいました。帰宅すると、ちょうど母が夕飯の支度をしていました。食卓にごはんが用意されると、僕は先ほど見たこと、女性の様子を家族全員に話しました。案の定みんな笑っていました。雨でガラスも濡れていたし数メートルの距離もあったし、見間違いだろうと。家族の笑い声を聞いていたら、いつの間にか嫌な気持ちも薄れていきました。

数日後の放課後、僕はまたいつものようにピアノ教室へ向かいました。タクシーに乗った女性を見てしまったあの場所も、なんとなく気にしてあたりを見るものの何もなく、いや、何かあるはずもなく、怖い気持ちが払拭されたような、怖いもの見たさの感情に対する期待が裏切られたような感覚でした。
そのうち記憶から薄れていきました。

それからどれくらい日にちが経った頃だったのか、朝いつものように学校へ行く準備をして、いつものように鏡の前で髪を梳かしていました。高校生らしいと言えばそうなのですが、恥ずかしながら当時の僕は女性にモテたくて髪を伸ばしてみたりカラーリングしてみたり髪型を気にしていました。
後ろからどう見えているのか気になって手鏡を使って洗面所の鏡の前に立ち、自分の後頭部を見ようとした瞬間…見えたんです。長い黒髪の女性がこちらを見ているのを。思わず振り返ったのですが何もなく、女性の姿もありませんでした。もう1度鏡を使って合わせ鏡をしてみたものの、やはり女性の姿は映りませんでした。一瞬の出来事だったので本当に女性だったのか何かの影だったのか、それとも勘違いなのか判断できませんでした。あまり怖いという感情はなかったのですが、タクシーに乗っていた女性のことを思い出しました。
一瞬見えた「何か」は、そのときの女性の姿にそっくりだったからです。

更に数日が経ち、僕は自分の部屋でマンガを読んでいました。ベッドで寝転がっていたのですが、足元に何かを感じました。ベッドは部屋に入って左側に置かれていて、寝ると部屋の入り口(ドア)の方に足が向くようになっています。ベッドといってもハイベッドと呼ばれるタイプのもので、2段ベッドの下が寝るスペースではなくデスクになっているデザインのものです。ある程度の高さがあるので足元の違和感がいったい何なのかわからなかったのですが、ドアの向こうに誰かの気配を感じました。その誰かが足元を見ている気がしたのです。しかも僕はこちらを見ている存在をまだ「見て」確認していないのに、なぜだか女性がこちらを見ていると感じました。
急いでハシゴを下りてドアを開けたのですが誰もいません。リビングで勉強している妹に部屋の前まで来たか尋ねましたが、答えはノーでした。そして、部屋の前に女性の気配を感じたこと、合わせ鏡に髪の長い女性らしき姿が映ったこと、それはあの日見た、タクシーに乗った女性に似ていることを伝えました。勉強に集中しているのか妹は振り向くこともなく相槌を打ちながら僕の話を聞いています。邪魔しちゃったかな?と思い
「なんか似てる気がするんだよね、あの日見た髪の長い女に」
と冗談っぽく笑いながらその場を立ち去ろうとすると、それまで問題を解いていた妹の手がピタっと止まり、真剣な顔をしてこちらを振り返りました。そして低いトーンで僕にこう言ったのです。
「お兄ちゃんにも見えてるんだね」(続く)

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